BLが好きな腐女子が10人いれば、10個の萌えがあるように思う。
他人の萌えと自分の萌えが、同じとは限らない。
私がBLに求める萌えには、ホラーSF系と童話ファンタジー系の二つがある。
童話ファンタジー系萌えは、二匹の猫が仲良くしているのを見ると、胸が温かくなってキュンとする感覚に似ている。
ホラーSF系萌えは、高い場所に上って景色を見下ろしたときに、背筋がぞわっと冷たくなる感覚に似ている。
ちなみに、私は高いところは、怖いけれど……好きだ。
ただ、美しく広がる花畑やキラキラ光る氷河や仲良しの動物達は見たいが、ゴミだらけの川やワニが小鹿をかみ砕いている様子は見たくない。
私は、昔は美青年だけが登場するBLの王道が好きだったはずなのだが、今はリバーシブル・年下攻め大好物、3P以上は全員の同意があればOK、オヤジ(←60歳まで)受け・髭男受けバッチコーイになってしまった。
きっと、松浦さんの影響を受けたせいにちがいない。
苦手なのは、暗いストーリー、ショタ受け、バッドエンドである。
実は、今までに文章を読んでいて一番ぞわっとしたのは、BL小説ではなく、新聞の投稿欄だった。
何年前か忘れたが、ある男性と女性の出会いだった。
男同士の話ではないのである。
あああああ、切抜きを残しておけば良かったーーーーーー。
↓こんな話だった。
ある男性が道を歩いていると、目にゴミが入って痛くてたまらなくなった。
それで、目薬を買おうと薬局に入った。
薬局にいた女性は、「あらあら、大変」と男性の顔をがっとつかんで、舌で目のゴミを舐めとった。
男性は、動けなかった。
(たしか、男性と女性は30~40歳ぐらいで、初対面だったような気がする。)
それを読んだ時、私の脊髄が凍った。
すさまじく怖い。
舌で目のゴミを取るなんて、想像したことも無かった。
私は、親に目のゴミを取ってもらったことは無い。
幼いころ、親に「目にゴミが入った~」と訴えると、「目をパチパチしなさい。ゴミが痛くない場所に行くから」と教えられ、それでも、「まだ痛い」と言うと、「手で水道の水を受けて、目をパチパチさせて洗い流しなさい」と教えられ、自分でなんとかするものだと思っていた。
目を舌で舐めると、細菌感染の可能性がある。
しないほうが、いいと思う。
でも、とても痛そうだったから、してあげたのかな。
私は絶対に経験したくないけれど、投稿欄の二人に、萌えた。
私の脳内では、……31歳ぐらいの顔と性格は良いけれど内気なのでモテない男性が、目が痛くて涙を流しながら薬局に入って行くと、33歳ぐらいの色白で神秘的な雪女のような美女が微笑みながら近づいてきて、冷たい指で顔を押さえて目のゴミをペローン……。
あああああ、すさまじく怖いが、萌える。
松浦さんが「BLで、何か読みたいストーリーは、ある?」と聞いたので、私は「初対面眼球舐め」と答えた。
しばらく困っていた松浦さんは、「BLじゃないけど、イーディス・ネズビットの『砂の妖精』に、眼球舐めがあったよ」と教えてくれた。
読んでみた。
赤ちゃんの目にゴミが入ったので、おねえさんが舌で舐めとっていた。
全然萌えなかった。
ちーがーうーのっ!
初対面じゃないとダメなのだっ!
赤ちゃんはおねえさんのことが大好きで、信頼感を持っているから、目を舐められても全然恐怖感は無い。
舐める人にも、舐められる人にもためらいや恐怖があって、それでも相手のために行動してしまったという状況じゃないとダメ。
口の中には悪い菌もいると思うので、恋人同士のプレイで眼球を舐めるのは、非常に嫌いだ。
他にも、いろいろ条件がある。
投稿欄のようなできごとでは、『女性店員・男性客』、『女性店員・女性客』、『男性店員・男性客』の組み合わせなら萌えるのだが、でも『男性店員・女性客』はNGなのである。
なぜなのかと聞かれても、嫌なものは嫌なのだ。
また、小説でないと、萌えないのだ。
BL漫画で、ほぼ初対面の男の子がゴミを取るために友人の目を舐めているシーンがあったが、全く萌えなかった。
目を舐めるシーンは、私にとっては、絵的に美しくない。
だから、私の脳内で、眼球舐めのシーンでは「見たくないものだけ隠せる魔法のベール」が都合よく現れて、隠してくれるのだ。
というわけで、私のホラーSF系の萌えの一番は、新聞の投稿だった。
先日までは。
市川春子さんの『25時のバカンス』という漫画を読むと、凍った脊髄が砕けてしまいそうなショックを受けたのである。
★ネタバレ注意★
その本に、『月の葬式』という月の住人と地球人の話が載っていた。
BLではないが、男二人が仲良くしている話である。
月の住人が病気で、皮膚がボタンのように硬化して落ちて、ハチの巣のように穴がたくさん開いてしまい、皮下組織が見える状態になってしまうのである。
もう、気持ち悪くて気持ち悪くて、鳥肌を立てながらも、……何度も読んでしまった。
なんとか読めたのは、市川春子さんの絵柄が写実的ではなく、ファンタジーな絵柄だからかもしれない。
月の住人は、顔も穴だらけになっていたのだが、髪の毛はフサフサしていた。
頭にも皮膚があると思うので、ボタンの大きさのハゲができていたら、読めなかったかもしれない。
私は、美しい男が部分的にハゲるのは許せないのだ。
ヤングースーパーマンのレックス・ルーサー(マイケル・ローゼンバウム)は、大好きだ。
だから、中途半端にハゲるくらいなら、お坊さんのようにつるつるに剃って欲しいと思う。
仲の良い二人がいて、片方が本当は妖怪でも、火事で全身火傷になっても、病気で全身ハチの巣状態になろうとも、……どんな姿になろうとも、この世界で君が一番好きだよ・大切だよ……と互いに求め合うというのが、私のホラーSF系萌えではないかと、ふと思った。
大丈夫だよ、バッドエンドじゃない。
フィクションだから、妖怪でも人間に生まれ変われるし、全身火傷でも時間がたてば無傷の美肌に戻れるし、ハチの巣状態でも治療すれば元の美形に戻れるんだから。
私のホラーSF系萌えというのは、他人には理解してもらえないだろうなあ。
夏川・松浦 URL 2012年02月04日(土)22時16分 編集・削除
こんど知人の童話系同人誌を送ります。やおいとして書かれたものではないのですが、やおいとしか思えない作品です(笑)。