BL◆父の肖像
1 − 13 − * * * 拓見は熱を出し、二日学校を休んだ。 その間昭義は、仕事の合間に拓見の部屋へ来ては、なにくれとなく面倒をみた。三度の食事に、着替え、額を冷やす濡れタオルの交換。 それらのすべてを、拓見は夢見心地に知覚していた。ぼんやりと目を覚ますたび、通りすぎる温もりに安心し、ふたたび眠りに落ちる。母が生きていたころの安らぎが、そこにはあった。 起こさないようにそっと頭を持ちあげられ、静かに氷枕が入れかえられる。深く寝入っていると思ったのだろう。温かな息が頬にかかり、つづいてなめらかな皮膚が瞼をついばんだ。 「……父さん……」 離れようとする昭義を、拓見はもうろうとしたまま捕まえた。 「どうして……どうしてこんなことするの……?」 昭義の穏やかな目が、つかのま迷うように煌めいた。 「……僕が、母さんに似てるから……?」 答えない昭義の背中に両手をまわし、拓見は静かに引きよせた。恋人を求める少女のように、そろそろとその体をかきいだく。 「父さん……僕はね……」 |