雅俊と久美子が帰り、一人になると、拓見はさっそく隠しておいたアルバムを取り出した。
はやる気持ちを抑えながら、一枚一枚順番にめくる。
先ほどちらりと見たとおり、父の若いころ――おそらく大学生時代のアルバムだった。いまよりも少し子供っぽい顔の昭義が、どのページでも屈託のない笑顔を見せている。
いっしょに写っているのはたいてい同じ顔ぶれだった。当時の昭義の、ごく親しい仲間たちだったのだろう。そして、そのなかでもとくに仲がよさそうに寄りそっているのは――。
「やっぱり……市村……先生?」
母、美也子に似た黒目がちの青年が、写真の中、昭義の隣から、はにかむようにこちらを見ていた。まだ二十歳そこそこの彼は、いくぶん中性的で、いっそう母とそっくりに見える。
「どういうこと……?」
互いに知らないふりをしていた二人、家の前で顔を合わせた二人のよそよそしい態度を思いかえし、拓見はふたたび漠然とした不安にとらわれた。
いったい……?
と、背後でことりと物音がし、拓見は慌ててアルバムを閉じた。
「拓見、それ……」
部屋の入口に、昭義がぼうっと突っ立っていた。
「拓見!」
はっと我に返ったように昭義は叫び、それを奪いとろうと巧みに駆けよった。拓見は取られまいと両腕で抱えこんだが、あえなく引きはがされ、自身はベッドの上にはじきとばされる。
「こんなもの……っ!」
昭義はアルバムを振りあげたが、床に叩きつけようとして思いなおし、力なく腕をおろした。
ベッドの上で驚愕に震えている拓見に目をやり、感情のこもらない声で問いかける。
「……見たのか」
拓見がうなずくと、昭義は息を吐いて目をつぶった。