BL◆父の肖像
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− 03 −
 夜の闇は、世界をまったく別のものに変えてしまう――。
 みしみしと近づく足音を夢うつつに聞きながら、拓見はベッドの上で無意識に手足を縮めた。
 ドアが開き、人の入ってくる気配がする。侵入者は枕元までやってくると、覗きこむようにして拓見の頬に触れた。武骨な指が唇を撫で、耳元に熱い息がかかる。
 はじめ寝たふりをしていた拓見だったが、胸のあたりをまさぐられると、思わずぴくりと反応してしまった。
「起きてたのか……」
 昭義の声が言った。拓見は答えず、その手を押しやって布団にくるまろうとする。だが昭義はかまわず腕を伸ばし、布団ごと拓見を抱えこんだ。
「やめてよ、眠いんだか……アッ」
 首すじを噛まれて拓見は身をすくめた。
 噛み痕をなぞるように、肉厚の舌がゆっくりと這いはじめる。ぞくっとして力が抜けたすきに、布団の下に手が滑りこみ、パジャマごしに無防備な体を捕らえた。
「……う」
 力強い大きな手が、臍から脇腹、胸から肩へと、包みこむようにこすりあげる。深部からこみあげてくる違和感に追いたてられて、拓見は昭義の腕の中で身をよじった。
「あ……あ……嫌……だ……やめてったら……」
 抱きしめられ、肩に何度も歯を立てられる。いつのまにか布団はすっかり剥ぎとられ、パジャマも首までまくりあげられて、あらわになった素肌を好きなようにもてあそばれていた。
 違和感が確かな快感に変わっていくのを感じながら、拓見は力を抜いて切ない声を上げた。
「……父……さん……」
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まろやか連載小説 1.41