BL◆父の肖像
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− 05 −
 この日イッコは、拓見にしつこく絡んだ。
 昨夜のように酒や煙草を勧めてくるまではよかったが、そのうち横にぴったり張りつき、大胆に拓見の体を触りはじめた。
「あんたって、どこもかしこも弱々しくて、壊れ物みたい」
 髪の房を指先でもてあそびながら、目を細めて言う。
「こんなんで、よく生きていけるよね」
 指が髪を離れ、耳朶から顎の線をゆっくり撫でていく。
「ねえ……あたしみたいな女、どう思う?」
 困った拓見は、救いを求めて少年たちの方を見た。だが彼らは故意に視線をそらし、気づかないふりをしている。
「あんた、学校でもてるでしょ」
 指が胸元を通り、さらに下へ進んだ。と、落ちるように股間に滑りいり、いきなり拓見のデリケートな部分を包みこむ。
 息を呑んだ拓見を見て、イッコはあははと声を上げて笑った。
「女の子みたいな顔してても、つくべきものはちゃんとついてるんだねェ」
 それからわざとらしく声をひそめて、
「でも、だったらよけい気をつけたほうがいいよ」
 下を向いているサトシの横顔に、険のある視線を投げつける。
「この部屋のヌシは、モーホーだからさ」
 サトシはなんの反応も見せず、何も言わなかった。
「それとも、もうヤられちゃった?」
 ヒステリックに言って、イッコは拓見を横から押したおした。強引に唇を奪ってから、呆然としている拓見のシャツに指をかけ、手際よくボタンをはずしていく。
「ねェ……気持ちイイことしよーよ」
 少年たちはやはり無視しつづけていた。
「あっ、あの……っ」
 声を出せるようになった拓見が、ようやく抵抗を始めたところへ、ガチャリとドアノブが回り、部屋の主が帰ってきた。
 スドウは中の様子を見ても何も言わなかった。イッコはつまらなそうに拓見から離れ、拓見だけが気まずい思いをして乱れた衣服を整えるはめになった。
 あるいはイッコのこうした行動は、ここでは日常茶飯事なのかもしれない。
 帰りぎわ、ミチが拓見にそっと耳打ちした。
「イッコはさ、サトシのことが好きなんだよ」
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まろやか連載小説 1.41