久しぶりに外食でもしようと、三人で繁華街を歩いていたときのことだった。
前方の画材店から出てきた人物を見て、拓見は反射的に足をとめた。
昭義だった。彼も拓見に気づいたらしく、数秒遅れて立ちどまった。
「拓見?」
敏の声に我に返った拓見は、すっと目をそらして昭義の横を通りすぎた。昭義は立ちどまったまま見つめつづけたが、呼びかけることも追ってくることもなかった。
「なかなかいい男だな」
充分離れてから、須藤が感想を述べた。
「彼氏か?」
「……親父」
拓見の答えに、須藤はちょっと目を丸くした。
「へえ……あんまり似てないな」
「そうかな?」
敏が反論した。
「俺は似てると思ったけど……雰囲気とか」
「僕は母親似だから」
言いながら拓見は、ちらりと後ろを振りかえった。昭義の姿はもう見えなかった。