すべてが元どおりになった。というより、すべてが変わったうえで、改めて落ち着きをとりもどしたというべきだろう。
二学期が始まると、拓見はまた雅俊や久美子と口をきくようになった。
拓見が思いきって挨拶すると、久美子は一瞬目を丸くしたが、すぐに満面の笑みを浮かべて挨拶を返した。雅俊は驚いた様子も見せなかった。
あとで二人きりになったときに、雅俊がきいてきた。
「ごたごたは一件落着したのか?」
「ああ」
拓見は答えた。
「市村先生は、僕の伯父さんだったんだ。母さんの兄貴なんだって」
「ふーん」
それだけだった。
その後、幼なじみ三人組の間で変わったのは、久美子が雅俊や拓見のことを、《湯川くん》《成島くん》と呼びはじめたことぐらいだ。
「だってさあ、あたしたちもうじき高校生なんだし、最近二人とも、マーくん、拓ちゃんてガラじゃないもんねえ」
拓見の背は、そろそろ久美子を追いこしつつあった。
市村とは当たらず触らずといった感じだった。二人とも、あえてプライバシーに踏みこまないよう心がけていたが、授業で関わるだけならほとんど気にする必要もなかった。市村は、重荷をとりのぞかれたような、どこかすっきりした顔をしていた。
廊下で佐藤と顔を合わせることもあった。
「おまえ、まだあいつらとつきあってるのか?」
こそこそときいてくる佐藤に、拓見は晴れやかな笑顔だけを返した。