虫の声がさかんに聞こえるようになったころだった。
当番日誌を書きおえた拓見は、何気なく前の頁をぱらぱらめくっているうちに、間違いを見つけてにやっとした。
十八日とあるべきところが、二十日となっている。そのつぎは正しく十九日。前に戻ってみて原因がわかった。
アラビア数字で書かれた日付が、十七日の当番の字が雑で、7が9のように見えるのだ。十八日の当番は、日付をうっかり忘れて、前日の日誌を頼りに書いたのだろう。そのときにもう一度うっかりして、十七を十九と読んでしまったというわけだ。
そのとき、その発見に喚起されて、拓見の頭の中で別のひらめきが生まれた。
拓見ははじかれたように立ちあがると、鞄と日誌をつかんで教室を飛び出した。