学会の噂はじきに現実のものとなった。
大学構内の施設は客人のために整備し直され、警備関係の人間が大学の内外で散見されるようになった。
組織からの何の接触もなく、宙ぶらりんな日々を送っていたライナーは、期日が迫るにつれ気分が浮き立ってくるのを抑えられなかった。
一方、星外に逃亡する計画を秘密裏に進めていたミハイルは、密航する船のめどもつき、いよいよ実行に移す準備に追われつつあった。
「ここを出て、どこへ行こうというんだ」
「どこへでも。私が私でいられる場所へ」
未練がましく引きとめようとするセルゲイに、ミハイルは以前とは違う穏やかなまなざしを向けて言った。
「あなたのミハイルは、あなたに会ってきっと自分の居場所を見つけたんだ。想像にすぎないけれど……彼の晩年は、きっと不幸ではなかった」
うなだれる老人を抱擁し、ミハイルはある種の愛情をこめてその両頬に接吻した。
「動植物園の管理をお願いします」
ミハイルはことさら冷淡を装って老人から離れた。
学会出席者の第一団がシームルグに到着したのは、その日の午後のことだった。