BL◆MAN-MADE ORGANISM
第1章/人に造られし者 − 15 − * * * 夜半、窓ガラスの立てた小さな音に、うたたねしていたライナーははっと目を覚ました。 こつん。 また鳴った。 起き上がって窓を開けると、眼下に立った黒い人影が、片手を上げて差し招いているのが見えた。 GODの応援だ……! はやる気持ちを抑え、足音を立てないように用心しながらそっと寄宿舎から抜け出す。人影が立っていたと思われる場所へ出てきょろきょろ見回していると、不意に背後から声がかけられた。 「ライナー・フォルツ?」 「そうだ」 動揺を押し隠してゆっくり振り返る。 黒衣に身を包んだ男が、背後に闇を従えて立っていた。 「ミハイル・グローモワはどこにいる?」 突然、黒い不安がライナーの心臓をつかんだ。 そうだ。応援とはもちろん、ミハイル暗殺のための応援に決まっているじゃないか……! 「知らない」 ライナーは反射的に答えていた。 「どこにいるのか、知らない」 半分は本当だった。ミハイルが今夜出発することは聞いていた。だが何時に、どこでどの船に乗るのかまでは知らなかった。 「来い」 男は有無を言わせぬ態度で命令すると、くるりと背を向けて歩きだした。ライナーは従うしかなかった。 近くに停めてあった小型車に乗りこむ。車はすぐに磁力で浮き上がり、二人を乗せてなめらかに疾走した。 目的地にはじきに着いた。グローモワの屋敷だ。 中に入ると、四、五人のいかめしい男たちがセルゲイ・グローモワを取り囲み、尋問している最中だった。殴られでもしたのか、セルゲイの顔には傷があった。 「強情だな」 ライナーを連れてきた黒衣の男が言った。 「手間を取らせるな。ミハイルはどこだ」 「……知らん」 セルゲイが主張すると、男は次にライナーに向かって聞いた。 「どこへ行った」 「知らない」 拳が空を切り、ライナーは壁に背中を打ちつけてよろめいた。 「奴はどこだ」 「……し、知らない」 ライナーは首を振って否定した。男はまた手を上げた。 「いいかげんにしろ、小僧。これ以上痛い目を見る前に素直に吐け」 黒衣の男がさらに暴力をふるおうとしたとき、通信機と話をしていた男が急に大声を上げた。 「いた! アータルの第三宇宙港……!」 「おまえも来るんだ!」 男たちはライナーを引きずって屋敷の外へ飛び出した。 |