BL◆MAN-MADE ORGANISM
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第1章/人に造られし者
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 寄宿舎に着き、自分にあてがわれた部屋に落ち着くと、ライナーは厳重に戸締まりをして浴室に入った。
 備え付けの剃刀を分解して鋭利な刃を取り出し、浴槽に腰かけてシャツの左の袖を捲り上げる。上腕の内側を探り、骨と肉の境目とおぼしき場所にその刃を当てる。
 寄せられた眉の間に脂汗が浮かび、引き結ばれた唇の下で喉仏が上下に震えた。
 血はほとんど流れなかった。
 裂かれた肉の間に指を差し入れ、中から小さな塊を取り出す。血を洗い流すと、金色のピアスが姿を現した。
「こちらMMO。聞こえるか?」
 ライナーはピアスに向かって囁いた。
『こちらはGOD。感度良好』
 ピアスが答えた。
「寄宿舎に着いた。大学でまた爆発があった。どうやらミハイル・グローモワが狙われているらしい」
 考えるような沈黙があり、しばらくしてピアスは再び口をきいた。
『こちらの計画に変更はない。健闘を祈る』
 ライナーはピアスを左耳につけた。傷ついた腕の手当てをし、浴室の汚れを落として外に出る。
 寝台に身を投げ出すと、緊張が解け、一気に疲労感が押し寄せてきた。
 抗いがたい眠りに引きこまれながら、ライナーは今回の指令に思いを馳せた。
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まろやか連載小説 1.41