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第3章/運命の手のひら
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 ほんの数秒、注意がそれた隙の出来事だった。
 ライナーを連れたイタロたちは、歓楽街に入ってすぐ、手近な飲食店で腹ごしらえすると、大通りにくりだして遊べる店を物色していた。
 積極的な客引きたちの誘いを軽くあしらい、看板を眺め眺め、そこかしこにたたずむ街娼たちにちょっかいをかけながら気ままに歩いていく。通り過ぎる人々のほとんどは、彼らと同じく外来者のようで、みな一様に珍しげな視線を宙にさまよわせている。
 そのとき、横道から飛び出てきた男がマレイにぶつかって転び、慌てて跳ね起きると猛烈な勢いで大通りを走りだした。
「スリだ! そいつを捕まえろ!」
 怒鳴り声とともに、同じ横道からさらに数人の男が現れ、イタロたち一行を突き崩して駆け抜ける。
 憮然としてその後ろ姿を見送り、ばらばらになった仲間同士ふたたび集まってはじめて、彼らはライナーがいないことに気づいた。
「ライナー? おい?」
 大通りにはそれらしい姿は見えない。近くの横道を一本一本覗いたが見つからない。手近の店に片端から入り、通行人に訊いてまわっても、手がかり一つ得られなかった。
「とにかく、戻ろう」
 途方にくれた一同の顔を見回して、イタロはそう決断をくだした。
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