BL◆MAN-MADE ORGANISM
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第3章/運命の手のひら
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 定期的に行われる検査を受け、実験室に戻される途中、すぐそばのドアが開いて、二人の兵士が苦虫を噛み潰したような顔で出てきた。
「これで三匹目だ」
「まったく、最近はどうなっているんだか……」
 何気なく中を覗くと、兵士が一人、壁に両手をつながれ、明らかに暴行を加えられた様子で力なくうなだれているのが見えた。
「それにしても、よくできたセクサロイドだ」
 その言葉にミハイルは思わず足をとめた。電撃をくらって膝をつきながら、もう一度部屋の中の兵士を見た。見覚えのある飴色の髪。心臓が裏返りそうになった。
「あとはどうする」
「適当に処分しとけ。どうせ何も吐きっこない」
 小突かれてミハイルは立ち上がった。だが中の兵士から目を離すことができない。
「あれは……?」
 震える声で訊くと、機嫌でもよかったのか、付き添いの兵士が珍しく口を開いた。
「スパイだ」
「顔が見たい」
 兵士は一瞬黙殺しようとしたが、ミハイルの様子にただならぬものを感じたのか、部屋から出てきたばかりの兵士に命令した。
「顔を上げて、見せてやれ」
 ライナーではなかった。ほっとすると同時に、ミハイルはすばやく頭を働かせた。
「三人目だと言ったな。彼がもし、私の知っている組織の者だとしたら、始末してももう手遅れだ」
 兵士は目をすがめてミハイルの顔を見つめた。それから上官を呼びにやらせると、ミハイルを連れて部屋に入った。
「どういうことなのか説明してもらおう」
 呼ばれてやってきた上官は、部下とミハイルと間者の顔を等分に眺めてから言った。
「組織そのものについては知らない」
 ミハイルは誤解のないように前置きした。
「だが、その組織に属していた暗殺用のセクサロイドなら知っている。この男が彼と同じなら、体から固有信号を発信していて、情報のいくらかはすでに漏れている」
「そういうことなら心配は無用だ。この建物の外壁は、あらゆる信号を遮断するようにできている」
 動揺させようとしたミハイルの思惑を上官は一言で打ち砕き、だがすぐに付け加えた。
「こいつの口を割らせることができるか?」
「できなければ?」
「こいつを殺すまでだ」
「では、もしできたら?」
 上官は思案するようにミハイルの顔を見つめた。
「一つでも有益な情報を引き出すことができれば、こいつはおまえにやろう」
「試させてほしい」
 ミハイルは即座に答えた。
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