BL◆MAN-MADE ORGANISM
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第4章/過去の亡霊
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「我々の新しい同胞に、乾杯!」
 カート・ボイドの音頭を合図に、居合わせた面々がいっせいにグラスを掲げて乾杯を唱えた。
 ミハイル・グローモワの歓迎会という名目で、内々の晩餐会が催された。隔離された広間に集ったのは三十数人。いずれも強化人間だという。立食形式のため、数人ずつがグループになって点在していた。
「今日はこれしか都合がつきませんでしたが、我々の仲間はほかにもまだいます。みんなあなたに会いたがっているので、近いうちにほとんど全員と顔を合わせることができると思いますよ」
 にこやかな笑みを浮かべてカートが言う。
 周囲を見回していたミハイルは、隣のイリヤ・ウォルハイムに顔を寄せて尋ねた。
「みんな若く見えるが。もっと年配の者はいないのか?」
「しかたがないのです」
 イリヤは少し無愛想に答えた。
「我々生殖能力を持つタイプは、生まれつき虚弱体質で、そう長くは生きられないのです。これより年長の者は数えるほどしかいません」
「ずいぶんじろじろ見られているような気がするな。新しい仲間が加わるのは、そんなに珍しいことなのか?」
「クローンタイプの仲間は、あなたが初めてだからです」
 居心地のいい雰囲気ではなかった。表面的には、銘々穏やかに談笑しているように見えるが、全員の視線がちらちらと自分に向けられているのがはっきりわかる。仲間を迎えるというより、珍獣を眺めに集まったというほうが近いような態度だ。
 これがすべて、自分と同じ強化人間なのか。
 ミハイルはある種の感動をいだいて、改めてあたりに視線を走らせた。と、行く先々で、さりげなく視線がそらされることに気づいた。どうやら、カートの言うほどには、自分は歓迎されていないらしい。
 生殖能力の有無という問題が関係しているのだろうか、とミハイルは思った。考えてみれば、一代限りの自分が一人ぐらい仲間に加わっても、彼らの将来にそれほど影響を与えるとも思えない。短命な彼らには、自分などにかかわりあうより、子孫を残せる伴侶を探すほうが重大な関心事なのかもしれなかった。
 そう思うと同時に、ミハイルはこれまで感じたことのない孤独感にさいなまれた。たった一人だと思っていたころのほうが、今よりはるかに満たされていたような気がする。
 弱くなった心を振りはらうように、ミハイルはグラスの酒を一息にあおった。
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まろやか連載小説 1.41