BL◆MAN-MADE ORGANISM
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第4章/過去の亡霊
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 ミハイル‐Hは、自室の端末から中央のコンピュータにアクセスできるよう手を加え、朝から膨大な量のデータを引き出していた。
 作業に夢中になっていたあまり、ドアのロックが強制的に解除されたことに気づくのが遅れた。
「ずいぶん熱心に、何をやっているの?」
 かろうじて、デイルが近づく前に画面を消すのは間に合った。いったんアクセスを中止すれば、アクセスの記録もデータも消去されるようにプログラムを改変してある。室内の監視カメラには、作業中だけ偽の情報を流すように細工していた。
「覚えていることは全部話してと言ったのに、まだ話してくれていないことがあるようね。こないだから、いったい何をこそこそ嗅ぎまわっているの?」
「人聞きの悪いことを言わないでくれ」
 ミハイル‐Hはしらばくれた。
「私の記憶にはところどころ穴がある。昔の記録を見れば、何か思い出すのではないかと思って、手当たりしだい閲覧していただけだ」
「そんな言い訳が通用しないことぐらい、わかっているんでしょう?」
 デイルの指摘に、ミハイル‐Hは黙って苦笑した。
「今からでも遅くないわ。何をしていたのか正直に答えて」
「私の個人的な問題だ」
「それではすまないのよ」
「言いたくない」
「では、言いたくなるようにしてあげるわ」
 デイルの合図で、屈強な体格の男が六人、部屋に踏みこんできた。
 取り押さえられても、ミハイル‐Hは抵抗しなかった。拷問に屈しない自信はある。それよりも、自分に発信機能がないという読みが当たっていたことに満足を覚えていた。彼らは何も知らない。だからこんな強硬手段に訴えざるをえなかったのだ。
 だが、彼の考えは甘かった。
「あなたの体が、今はセクサロイドのものだということを、忘れているわけではないでしょうね」
 デイルが酷薄な笑みを浮かべて言った。
「官能細胞を植えつけられたセクサロイドのボディが、性的刺激にどんなふうに反応するか、あなたは知らないでしょう? いい機会だから、じっくり体験してみるといいわ――ダグ、ゴードン」
 二人の男が進み出ると、ミハイル‐Hの衣服をむしりとり、革の枷で厳重に全身を拘束した。続いて、自分たちも着ているものを脱ぎ落とす。鍛えあげられた逞しい裸体が現れた。股間にはそれぞれ、改造されたグロテスクなものが隆々とそびえている。
「この男たちも、あなたと同じセクサロイド。それも、六人全員がセックスのエキスパートよ。いっそ死んだほうがましだと思うくらい悦ばせてくれるわ」
 残りの男たちも服を脱ぎはじめるのを、ミハイル‐Hはうつろなまなざしで見つめた。
 何よりも彼を打ちのめしていたのは、枷をはめられたとき、自分の体の奥から湧きあがってきた甘いうずきだった。
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まろやか連載小説 1.41