BL◆MAN-MADE ORGANISM
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第5章/いくつもの未来
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 施設の一般区域も迷路のような造りになっていたが、立入禁止区域は正真正銘の迷路だった。
 コンピュータから盗み出した情報は不完全なものだったらしく、二人は、予想していなかったたくさんの通路や袋小路に悩まされた。
 抜け道からいきなり現れるM・M・Oの兵士たち。たびかさなる不意打ちを、二人があわやというところでくぐりぬけ、ほとんど無傷で進撃を続けているのは、奇跡のようなものだった。
「ここでどうして、最新型M・M・Oの開発に力が入れられているのか、わかったような気がする」
 乾きかけた血痕と埃にまみれ、肩で息をしながら、ライナー・ミハイル‐Hは、足元に倒れている兵士たちに目をやった。
「人間たちの新しい奴隷としてじゃない、これもまた、強化人間のための開発なんだ。彼らは自分たちを人間より優れたものとみなし、人間を支配しようとしている。だが、圧倒的に数の少ない彼らには、忠実で強力な味方が必要だった。……もしかしたら、M・M・Oの人格に、ふつうの人間でなく、強化人間である私のものを採用したのも、彼らの何がしかのこだわりだったのかもしれない。だとしたら、実に皮肉な話だ」
 ふらつきながらも、二人はできるだけ急いでその場を離れた。M・M・Oたちの監視システムがどこにあるのかは、いくら調べてもわからなかった。おそらく強化人間たちが直接管理しているのだろう。いつまでもM・M・Oたちのボディのそばにいるのは、愚かな行為だ。
 二人ともそろそろ体力の限界がきていた。近くの待避所に入り、しばらく休憩をとらなければならない。
 このような状況は充分予想されており、下調べの段階で、二人は待避所として使えそうな空間をいくつかチェックしていた。
 現在位置から最寄の待避所までおよそ三〇メートル。予想では、そこにたどりつくまでに、どちらかあるいは両者とも重傷を負っているかもしれないと考えていたが、二人は幸運だった。
 目標である通気口の蓋が見えたとき、ライナーの体が衝撃を受けて吹き飛ばされた。
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まろやか連載小説 1.41