BL◆MAN-MADE ORGANISM
第5章/いくつもの未来 − 17 − * * * 「そこまでよ」 すぐ脇にあった隠し扉から、銃を構えたデイル・ホークスが姿を現した。 銃口はまっすぐミハイルの眉間に向けられている。 ミハイルは横目でライナーの姿を探した。ライナーは仰向けに倒れたままぴくりともしない。その額に醜い傷ができ、そこから赤い血が糸のように流れているのを見て、ミハイルは内臓を握りつぶされるような苦痛を覚えた。 「たった二人で、よくここまで来たと誉めてあげる。でももうおしまいね。あなたたちの狙いがわかった以上、生かしておく危険は冒せなくなったわ」 ミハイルは疲れきっており、デイルが銃を撃つより速く動くような体力はもう残っていなかった。 「……デイル」 やっとのことで声を出した。 「私は行かなくてはならない」 「もう駄目よ。あなたはここで死ぬの」 デイルの声は冷静で、そこには微塵の迷いもなかった。 ミハイルは一瞬、まもなく訪れる死を覚悟した。だが次の瞬間には、わずかな可能性を求めてめまぐるしく頭を回転させていた。 「聞いてくれ」 ミハイルは、相手を刺激しないよう努めて穏やかに言った。 「君は騙されている。強化人間は半世紀前に滅んだりしていない。評議会のメンバーはすべて強化人間だ。彼らは、ひそかにメリア共和国を支配し、やがては全人類の上に君臨しようと画策している。君の研究は、君たち人間のためではなく、強化人間のために利用されようとしているんだ――」 突然、デイルがけたたましい笑い声を立てた。 「そうよ、すべては強化人間のため! 私たち強化人間のための研究よ!」 ミハイルは呆然と口を開いた。 「気がつかなかった? そう、私は強化人間なの! 体力的には人間とほとんど変わらないけれど、私は強化人間で、評議会メンバーの一人なのよ!」 こんどこそ、ミハイルはすべてを諦めた。首を回して、動かなくなったライナーをもう一度見つめ、視線を戻してデイルの顔を見つめた。 「――結局私たちは、君の手の中で踊らされていただけだったというわけか」 「おやすみなさい、ミハイル」 デイルの銃の引き金が引かれた。 |