BL◆MAN-MADE ORGANISM
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第5章/いくつもの未来
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 ライナーとミハイルによる破壊工作が露見し、施設内が騒然としはじめたころ、ウォンはひそかに行動を開始した。発信機能付きのボディを持つために何も知らされていなかったが、二人が何をしようとしているのか薄々見当はついた。
 いずれ助けが必要になるだろうと判断したウォンは、別ルートから合流しようと、大きく迂回しながら騒ぎの中心部へ向かった。その途中で、銃を手に先を急ぐデイルを見かけ、ひそかにあとをつけてきたのだという。
「まだしばらく別行動をとったほうがいいだろう。最終的にどこへ向かえばいい?」
「施設の東南部に、極秘扱いの空白地帯がある。おそらくそこが彼らの本拠地だ」
 答えてからミハイルは、一瞬不安な顔をしてウォンを見つめた。
「ありがとう。だがくれぐれも気をつけてくれ」
「大丈夫だ。あなたたちの足をひっぱらないよう、危険な真似は極力避ける」
 ウォンは力強く答えると、すぐに身をひるがえして駆けだした。
 ライナーとミハイルは、予定どおり通気口の中にいったん身を隠し、休憩をとりながらライナーの傷を手当てした。
 傷口は胸の悪くなるような形状をしていたが、血はすでにとまり、周囲の肉が盛りあがって早くも再生の兆しをみせていた。
「手や足でなくて、むしろ幸いだった。視覚にも異状はないから、戦闘に支障はない」
 凄惨な顔でけろりと言うライナーを見て、ミハイルは衝動的に唇を重ねた。ライナーはしばらくそれに応え、顔を離してから、乱暴にミハイルの髪をかきまぜた。
「続きはもうひと運動してからだ」
 ミハイル‐Hとともに目覚めてから、ライナーは目に見えて自信に満ちてきた。とくに、こんどの計画を練りはじめてからは、生き生きしてさえ見える。
 ライナーはもう、主人の庇護を必要とする従来のM・M・Oではないのだ。
 そう実感したとたん、ミハイルの中でくすぶっていたもやもやは跡形もなく消えた。
 この作戦を無事完遂することができたら、自分たちはさらに新しい関係を築くことができるだろう。主人でもしもべでもなく、対等の人間として。強化人間でも人造生命体でもなく、ただの人として。
 そのためには、何としてでも生き延びなければならない。
 ミハイルは、自分自身の中でも何かが変わっていくのを感じた。
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まろやか連載小説 1.41