3 − 【07】

 その日拓見は、ゲームセンターには寄らず、まっすぐ須藤のアパートへ行った。
 ポストの下の合鍵を使って中に入ると、須藤は布団の上ですやすやと寝息を立てていた。拓見は起こさないようにそっと枕元を通りすぎ、窓際に座ってじっと須藤の寝顔を見つめた。
 いつもは怖いぐらいに見える彫りの深い顔も、寝ているときは、虫も殺さないような穏やかな表情を浮かべている。洗いざらしの髪が額を隠しているせいで、年齢まで二つ三つ若く見えた。両耳のピアスはつけたままだ。
 視線をはずし、しばらく窓の外を眺めていると、起きだす気配がして、須藤が体をこちらにずらすのがわかった。
 須藤の手が股間に伸ばされたとき、拓見はぴくりと体を震わせる以外、なんの反応もしなかった。つぎに須藤がどう出るかは予想済みだった。わかっていて、待っていた。
 須藤も何も言わなかった。彼は背後から拓見を抱くようにすると、股間に置いた手をゆっくり動かしはじめた。拓見は目をつぶり、両手を畳についた。
 須藤は巧みだった。軽く抱いたまま、その手を動かすことも、唇を這わせることもしない。片手だけを静かに上下させて、拓見をじょじょに、だが確実に追いあげていった。
「ァ……」
 手が離れると、拓見は吐息のような声を漏らした。須藤は拓見のジーンズに指をかけ、そこから拓見の一部を解放した。蜜をにじませたそれを片手で支えるように持ち、もう一方の手で衣服を脱がせにかかる。
 拓見は目を閉じたまま、息をひそめ、じっとしてされるままになった。彼の指がどのように動き、それに自分の体がどう反応するか、一つひとつ皮膚で、耳で確認していった。
 拓見が須藤に身を任せてみようと思ったのは、無粋な表現をすれば実験のためだった。父と自分の関係はなんだったのか、父がどういうつもりで自分を抱いたのか、自分は愛情をいだいていたから悦んだのか、それは父でなければならなかったのか……。
 結果は虚しいものだった。拓見はたやすく燃えてしまった。それも、手慣れた須藤の愛撫で、父とのときよりも強い悦びを感じてしまったのだ。
「あ……あ……もう……」
 須藤はイかせてくれなかった。イったとたんに歓喜は消え、代わりに惨めな後悔の念が押しよせる。まるでそのことがわかっているように、須藤は拓見の持続に力を注いだ。
 後孔に入れられた指は、積極的には動かない。もう一方の手や口による愛撫の加減で、須藤の体が動くと、それにつれてかすかに動く程度だ。指の存在を意識しないではいられないが、それによって強い快感が得られることもない。
 うつぶせにされ、もう一本指を入れられた。甘い疼きが背すじを這いのぼり、拓見は両手で顔を隠すようにして体を丸めた。
「ぁあっ……っ」
 須藤は無言で拓見の体に手を滑らせた。形を確かめるように、人差し指で背骨と肩甲骨をそっとなぞっていく。くすぐったいような感覚に、拓見が思わず体を震わせると、埋められた指が内部を心地よく刺激した。
「……ん……ふ……ぅ」
 やがて指が引きぬかれ、代わりにもっと熱いものがあてがわれた。猛々しい牡が拓見の体を割りひらく。その太さに拓見は呻いたが、それもやはり入りきったところで動きをとめ、満足させてはくれなかった。
「……お願い……」
 拓見は蚊の鳴くような声で懇願した。顔が焼けるように熱くなる。侵入していたものがどくんと脈打ち、それに呼応して拓見のそこがひくりと縮んだ。
 須藤はじらすようにゆっくり動きはじめた。じわじわと掘りすすむようなその感覚に、拓見の牡が痛いほど張りつめる。その根元を指でせきとめておいて、須藤はじっく


[2]

[4]BACK [0]INDEX [5]NEXT
[6]読んだよ!(足跡)
[#]TOP
まろやか連載小説 1.41