* * *
死体、死体、死体……。
古いフィルムは飽くことなく死体を吐き出し続けていた。
額を撃ち抜かれた者、首を切り裂かれた者、ばらばらに解体された者……。
戦地で折り重なるように倒れている映像もあれば、狩りの獲物のように並べられ、一つの穴に埋められようとしている映像もあった。捕らえられ、今まさに処刑されようとしている場面もあった。
だがそれらは、その記録の異様さの瑣末な部分にすぎなかった。
本当の異様さは別のところにあった。すなわち――。
映し出された死体は、いずれも寸分違わぬ同じ顔をしていたのだ。
ほとんど銀髪に近い薄い金色の髪。同じく銀色と見紛う青灰色の瞳。彫像のように洗練された鋭利な顔は、苦痛に歪むこともなく、死を前にしてすら傲慢なほど無表情だ。
怯えるでもなく恨むでもなく、自分を狙う銃口を見据えるその冷たい顔に、ライナーは我知らず肌が粟立つのを感じた。
そして何より、同じ顔の死体が幾十と重なりあうさまは、ただ壮絶の一語に尽きる。
「すごいものだろう」
背後の暗闇からの声に、ライナーは唸るような声で答えた。
「……ゲップが出そうだ」
「遺伝子操作と品種改良によって造り出された強化人間――人間兵器とでも呼ぶべきものだ。宇宙開発のための労働力として生み出され、のちに星間戦争の第一線に駆り出された。常人の五倍から十倍近くある運動能力、小型コンピューターなみの記憶力、柔軟な判断力、そして過酷な環境と孤独に耐えうる精神力……」
「なぜみんな同じ顔を?」
「クローンだ。彼らの最後の世代は、ほとんどがある優秀な一個体をもとにしたクローンだった。長い近親交配の結果、彼らの多くは自然生殖が不可能になっていたのだ」
「それで、絶滅したんですか」
「そうではない」
背後の声に苦渋の色がにじんだ。
「人間たちによって処分されたのだ。彼らはあまりにも優れていた。人間は彼らの存在を恐れ、戦争が終わったとき、彼らを永久に抹殺してしまうことを決めた。……それが約百年前のことだ。最後の一体は、五十二年前、開拓途中の辺境の星で処分されたという記録が残っている」
短い沈黙のあと、ライナーは嫌々口を開いた。
「で、俺にこんな骨董まがいの映像を見せたわけは?」
「これを見たまえ」
画面が変わり、つい最近のものと思われるニュース放送の立体映像が現れた。
『……カラ太陽系シームルグの首都アータルで、今日昼ごろ爆発事故が起こりました。場所は王立大学の実験棟で、死者二名、重軽傷者二十三名の惨事と……』
ナレーションとともに現場の立体映像が映し出される。
爆発が起こった直後のものなのだろう、あたり一面もうもうと白煙が立ちこめ、あちこちで小さな炎がくすぶっていた。半ば崩れ落ち、巨大な口を開けた天井。倒れた壁、柱。粉々になったテーブルや実験器具。そこかしこで倒れ、うめき声を上げている人々。瓦礫の間を駆け回り、被害者を運び出す救助隊の面々……。
と、画面の左端で何かが動いた。
倒れていた柱がゆらりと持ち上がり、地響きを立ててもう一度崩れた。巻き上がる砂煙の向こう側で人影がうごめく。一人が、柱の陰からもう一人を引きずり出し、肩に負って歩こうとしているのがわかった。砂煙がおさまるにつれ、彼らの姿がしだいにはっきり見えてくる。
「あ……!」
目が映像をとらえるのと同時に、ライナーは声を上げていた。
煙の向こうから現れたのは、見飽きるほど見たあの顔だったのだ。
白金の髪、銀の目、作り物のように無表情な顔。
石膏像を思わせる男は、負傷者を軽々