夜も更けてミハイルが船長の部屋から出ると、ちょうど誰かが同じようにして通路に出てくるところだった。 ライナーだ。 ミハイルは声をかけようとして途中で思いとどまった。ライナーの出てきた部屋を見て違和感を覚えたのだ。船医のイタロの部屋だった。 今ごろこんなところに何の用だろう? ライナーはこちらには気づいていないようだった。ミハイルが見ている前で、自然なそぶりで足を踏み出すと、通路を向こうへ向かって歩きはじめる。 彼の姿が自室に消えるまで、ミハイルはその場に立ちつくしていた。