第5章/いくつもの未来 − 【10】

 だがミハイルはなかなか決心することができなかった。
 ミハイル‐Hの話を聞き、強化人間たちの不実の証拠をつきつけられた今、進むべき道は決まっているようにみえる。だが、欺かれていたとは信じたくない気持ちもあり、ミハイル‐Hの言葉が真実かどうか疑う気持ちもあって、簡単には答えを出せなかった。
 二日の猶予の間、彼は地球に来てからの体験を思い返し、また、自ら内密に情報を集めて、堂々巡りの自問自答をくりかえした。
「協力しよう」
 最終確認のため、ふたたび訪れたライナー・ミハイル‐Hに、ミハイルはようやく出た結論を伝えた。
「ただし、条件がある。計画の実行にあたり、私たちは生きてそれをなしとげなければならない。心中は無しだ。彼らは滅び、君は生き残る――そうでなくては、復讐を果たしたとはいえない」
「ずいぶん簡単に言ってくれるじゃないか。彼らを壊滅させるほどの騒ぎを起こして、無事にここから脱出できるとでも?」
「助力は得られる。気は進まないが、利用できるものをしない手はない」
 ミハイルの頭にあったのは、ディーナ・シー連邦を後ろ盾とするユージン・メリエスの存在だった。連邦そのものについてはともかく、さしあたってユージンは信用してもいいだろう。彼なら知恵も貸してくれるかもしれない。
「まずは、君の計画を聞かせてもらいたい――」
 ライナー・ミハイル‐Hの話に耳を傾けながら、ミハイルはその計画に少しずつ修正を加えていった。



2014/03/21update

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