去年のことだった。
朝起きようとしたら、天井がぐるぐるまわって、立ち上がれなかった。
どうして?
渦潮に巻き込まれる船に、乗っているような感じ。
めまいがして、吐き気がひどかった。
寝返りをしても、めまいがした。
頭をある角度に動かすと、めまいが起こるのに気がついた。
パソコンまで、はいずって行った。
めまいのHPで、自分の症状をチェックシートで選ぶと、「あなたは、BPPVの可能性が大きい」という結果が出た。
BPPV……良性発作性頭位変換めまい。
前庭にあった耳石が、三半規管のリンパ液の中に迷入した可能性がある。
頭をある角度に動かすと、リンパ液の中の耳石が動く。
耳石が、リンパ液に溶けてしまえば、何もしなくても治る場合もある。
三週間ぐらいで溶けることが多いが、溶けないこともある。
耳鼻科で診察を受けるといい。
しかし、苦しすぎて、病院まで行けない。
2ちゃんねるの「めまいスレッド」を見ると、仲間がいた。
いろんなことを、教えてもらった。
病院に行くと、動くベッドに乗せられたり、耳に水を入れられたりする。
わざとめまいをおこして、眼球が回る様子を観察されるらしい。
無理・無理・無理!
BPPVと診断されると「船酔いも慣れれば平気だから、めまいも慣れて」と言われることもある。
「エプレイ体操してね」とプリントを渡されることもある。
一度耳石が、三半規管に入ってしまうと、「クプラ」というものがじゃまで出られない。
でも、エプレイ先生が、「耳石を三半規管を巡らせて前庭に再配置させる体操」を考え出したらしい。
エプレイ先生、すごいなあ。
前向きな気持ちになって、エプレイ法について調べた。
エプレイ体操は、めまいをわざと起こす体操で、怖くても目をしっかりあけて天井を見なくてはいけない。
……怖い。
エプレイ法は、右耳の病変と左耳の病変では、全く逆の体操になる。
体操を間違えると、耳石をさらに奥に入れて、悪化させることもある。
……や、やっぱり怖い。
能天気な私も、プリントアウトしたエプレイ体操の紙を握りしめながら、一日迷った。
でも、次の日の朝もひどいめまいで始まったので、我慢できず、エプレイ体操をすることにした。
怖い体操を人にされるより、自分でするほうがいいじゃないかっ!
目をしっかり開いて、よーい、ドーンっ!
……治った。
一回の体操で、めまいは起きなくなった。
「あの苦しい二日間は何だったのか」と思うほど、簡単に治った。
エプレイ先生、好き好き大好き。
ああ、人体はとっても複雑で不思議。