BL◆MAN-MADE ORGANISM
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第1章/人に造られし者
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 超光速航行から通常航行に戻ったとたん、船窓の外に一面の星空が広がった。
 地上で見るのとは違う底無し沼のような星空だ。吸いこまれそうなこの深淵を意識するたび、理由のない恐怖に心臓をわしづかみにされる。
 ライナー・M・H・フォルツは、無理やりその恐怖を閉め出し、近づいてくる小さな惑星に焦点を合わせた。
 カラ太陽系第四惑星シームルグ。年間を通じて温暖な気候に恵まれるこの星は、近隣の殖民星から優秀な学者を呼び集め、学問の殿堂として広く知られている。
 ライナーは、その首都アータルにある王立大学に中途編入するため、一人貨物船に便乗してやってきたのだった。
「あと三十分ほどで着く」
 後部の出入口が開き、入ってきた乗組員がぶっきらぼうに言った。生きた荷物をありがたく思っていないことが明白な態度だ。
「どうもありがとう。今準備します」
 椅子を倒して寝そべっていたライナーは、せいぜい愛想よく見えるように微笑を浮かべて言った。
 短めに刈りこまれた飴色の髪に、よく似合う鳶色の瞳。彫りは深いが険しいというほどでもなく、訓練された軍用犬のような緊張感と愛嬌とが混在した顔立ち。体躯は長身でほどよく引き締まり、若い男特有のしなやかさを備えている。
 重心を移して苦もなく床に降り立ったときには、乗組員はすでに立ち去ったあとだった。ライナーは軽く伸びをすると下船の準備にとりかかった。
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