BL◆父の肖像
1 − 14 − * * * 熱が下がると、あとはけろりとしていた。 「もー、拓ちゃんたら。あたしたち、今日お見舞いに行く予定だったんだよ?」 お母さんからお見舞い用のケーキ代ももらったのに、と久美子が頬をふくらませて言った。 「村野はさあ、ケーキ食いたかったんだよな?」 雅俊がにやにやして言いつける。 「あそこのケーキ屋がいいの、どのケーキがうまいの、さんざん言ってたもんなあ」 「マーくん!」 こぶしを振りあげて怒る久美子に、雅俊が頭を抱えて逃げるまねをする。 久しぶりに楽しくなった拓見は、笑いついでに提案した。 「じゃあさあ、二人とも、今日の放課後うちへ来ない? 全快祝いってことで」 「えっ、いいの? お父さんに迷惑じゃない?」 「ううん、連絡しとけば大丈夫だと思う」 「あっ、決まり決まり、そうしよう!」 「よかったなあ、村野。ケーキが食べられて」 「マーくんのばかッ!」 久美子の蹴りが雅俊の向こうずねに決まった。 |