BL◆父の肖像
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− 09 −
 その夜、昭義は荒々しく拓見をむさぼった。
 小柄な拓見の体を、人形でも扱うようにひっくりかえし、折りたたみ、引きのばし……体の隅々まで食らいつくすような執拗な愛撫に、拓見は半分怯えの混じった嬌声を上げていた。
「アァ……嫌……嫌だ嫌だ嫌だ……」
 両手首を脇腹のあたりでひとまとめに押さえられ、持ちあげられた片足を上から下まで丹念に舐められる。唇と舌が足の指を包みこみ、搾るように吸っては離れると、理解しがたい戦慄が身内を走って、拓見は涙ぐんだ。
「……もう……もう、やめて……」
 足首をつかんだ腕が大きく横に動き、まだ成熟しきっていない陰部をさらけだした。内腿に熱い息がかかったと思うと、ぬるりと生温かいものが通りぬける。
「う……っく」
 拓見は悲鳴を呑みこみ、細い手足をひきつらせた。ふたたび襲いかかる生々しい感触に、こんどは抵抗することさえできない。
 悦楽の中心をからめとった舌が、なめらかな皮膚の上を自在に動きまわった。湿った粘膜がすっぽりと覆いかぶさり、あおるように唇がしごきあげた。
「ああ……ぁあ……ぁ……もう嫌……嫌……っ」
 ふいに昭義の顔が離れ、拓見は高ぶったまま放り出された。ずりあがって逃げようとするのを引きもどされ、尻を上げた姿勢でうつぶせに固定される。
 つぎに来るものを予想して拓見は怖気づき、同時に行為の終了を確信して安堵した。
 だが昭義のほうは、今日はそれで終わらせてしまうつもりはないようだった。彼は拓見の奥に身を沈めたあと、欲望のまま動きだす代わりに愛撫を再開した。
 後ろから拓見の体を抱えこみ、口と手を使ってなだめるように撫でさする。首から背中にかけては、唇と舌と歯で。胸から股間にかけては指先で。
 はじめのうち拓見は、むりやりつながれた部分が気になって快感を覚えるどころではなかった。だが根気よく刺激を与えられるうちに、挿入によっていったん萎えた若根がふたたび頭をもたげ、前にもまして強い愉悦が湧きあがってくるのを感じた。
「あっ……は……ぁあ……はあ……は……ァ……」
 その愉悦がどこから来るのか、気づいたときにはもう引きかえせなかった。
 初めて後ろで味わった快感は、少し苦しく……そしてあとを引くように蠱惑的だった。
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まろやか連載小説 1.41