BL◆MAN-MADE ORGANISM
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第1章/人に造られし者
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 第三宇宙港は小型船専用の簡素な施設だった。貨物船が中心となるために乗客の乗り降りは少ない。乗組員も、限られた人員で船を動かしているので、入港と同時に作業服をまとって整備員に早変わりする。そのため全体的に、港というより造船所といったほうがいいような雰囲気だった。
 男たちが到着したとき、ミハイル・グローモワは自走タクシーを降りて、今しも宇宙港の門をくぐろうとしているところだった。
「逃げろ、ミハイル!」
 ライナーの叫びに、ミハイルはとっさに中へ駆けこもうとしたが、先回りしていた別の車が横から出て門をふさいだ。
 車から飛び降りようとしたライナーは、腹部に重い一撃を受け、あっけなくシートに引き戻された。
「動くな!」
 荷物を下ろして身構えたミハイルに向かって、黒衣の男が叫ぶ。
「抵抗すればこの男を撃つ!」
 どうしてそういうことになるんだ。
 ライナーは朦朧と考えた。
 そんな脅しで、ミハイルが言うことを聞くものか。
 だがミハイルは構えをといた。
「よーし、いい子だ」
 黒衣の男は舌なめずりして銃を構えた。
「そのままじっとしてろよ。なァに、ただの麻酔弾だ。死にやしない」
「やめろっ! やめろったら!」
 背後で身をふりほどこうと暴れるライナーには目もくれず、男はゆっくり照準を合わせ、引き金を引いた。
 衝撃でミハイルの体が揺らいだ。腹部をかばったミハイルの体から力が抜け、崩れるように膝をつく。
「へっ、安い仕事だ」
 男が満足げに呟いたそのとき、その額に赤い点が浮かび、声もなく男はくずおれた。続いてほかの男たちも次々に倒れた。
 ライナーが状況を呑みこめないでいる間に、先ほど門をふさいだ車からいくつかの人影が降りてこちらへ近づいてきた。そのうちの小柄な人物が、男たちの死骸をのぞきこんで冷たく言った。
「おかげで手間が省けたわ、お馬鹿さんたち」
 デイル・ホークスだった。
「デイル? なんで君がここに……」
「GODに言われて応援に来たのよ、MMO」
 ライナーはあんぐり口を開けた。
「何だって? ……それじゃ……君……」
「ひどい目にあったみたいね」
 デイルは凶悪な笑みを浮かべて言った。
「悪かったわね。この連中に、あなたを人質にとるよう仕向けたのは私なの。こいつらは、ミハイル・グローモワを狙っていた別の組織の人間よ。ふふ……一石二鳥だったわ」
 倒れたミハイルの方へ向かうデイルの背中を見つめていたライナーは、はっと我に返って声を上げた。
「ま、待ってくれ……!」
「安心なさい」
 デイルは向こうを向いたまま言った。
「計画は変更よ。彼は生かしたまま連れていくわ」
 デイルと一緒に来た男たちがミハイルの体を回収した。その様子をぼうっと眺めていたライナーのところへ、デイルが男の一人を従えて戻ってくる。
「評議会の通達を伝えるわ」
 男が黙ってライナーの体に手をかけた。デイルが事務的に告げた。
「ライナー・M・H・フォルツ。命令違反の罪で、これより貴君の身柄を拘束する」
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